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朝永博士の物理学

 
 

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博士の理論物理学への寄与は多岐にわたりますが,おもな業績は以下の四分野に大別されます。

 
     

 

1) 超多時間理論とくりこみ理論
 
  素粒子を記述する,いわゆる「場の量子論」は,相対性理論との関係が必ずしも明らかではないという欠点をもっていましたが,博士は,空間の各点はそれぞれ固有の時間をもつと考える「超多時間理論」により,この困難を解決しました。また,電子・電磁場系に対する場の理論―「量子電気力学」―は,物理量を計算するとすべて無限大になるという自己矛盾を含んでいます。しかし,超多時間理論を適用した結果,無限大の各項は電子の質量または電荷への補正と考えてよいことが分りました。そこで,これらの無限大を電子の質量や電荷にくりこんでしまえば,すべての物理量は有限となり,理論と実験とは極めてよく一致します。これが博士の「くりこみ理論」です。  
 
2) 集団運動の理論
 
  マクロな物体には1cm3あたり1022個ぐらいの原子が含まれています。しかし,これらの原子がバラバラにではなく全体としてまとまった運動を示すことがあり,これを「多体系の集団運動」とよびます(例えば物質中の音波)。博士は,原子のバラバラな運動から集団運動を分離し,多体系を取扱うための一般的方法を確立しました。この方法は,今日,理論物理学の多くの分野で応用されています。  
 
3) 中間子論
 
  湯川博士の中間子の理論によれば,原子核内の核子(陽子・中性子)は中間子を媒介として,核力という強い力を相互に及ぼしあっています。中間子が核子に与える「場の反作用」の諸問題,両者の相互作用が極端に強くはない場合の「中間結合の方法」など,中間子論の数学的構造を分析することにより,その物理的内容を明らかにしました。  
 
4) マグネトロンと立体回路
 
  戦時中になされた応用物理学的研究としては,マグネトロン(磁電管)の発振機構についての理論的研究が著名です。とくに,原子核反応論との類推に基づいた「極超短波の立体回路の理論」は,この分野で停滞していた電子工学に新たな活力を与えました。  
 

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これらの業績に対し,ノーベル賞,文化勲章,学士院賞,ロモノソフ・メダル,朝日賞等が授与されています。

 


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